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ごく初歩的なモニターの出し方

このページでは、夏祭り等、モニターへの要求がそんなに厳しくない現場での簡易的なモニターの出し方を一例として書いてみます。

あくまで簡易、間に合わせ。かなり雑というか乱暴というか、『鳴りさえすればそれでいい』という程度です。それでも知らないよりはマシ。かな?知らん方が良かったりして。

そもそもモニターって何ぞや

PAのことを解説しようとすれば、ミキサーからスピーカに至るまでの信号の経路と、簡単な音の出し方は結構楽に文章化できます。しかしそこから先、モニターの出し方とかエフェクタの使い方なんかは、なかなか書けるものではありません。人によってやり方が違うこともあるし、なんと言っても 現場百回、ケースバイケース というファクターが大きすぎるんだ。だから、そのへんを書いたウェブサイトが少ないんだと思う。無報酬でデータ化するには荷が重すぎる。

でも俺は、あえてそこあたりの解説にトライしてみようと思う。あくまで私流であることを断っておきます。

まあだいたいこんな感じの仕込みを思い出す人が多いでしょう。これは俗にコロガシと呼ばれるセッティングで、まさしくステージの足下に転がされています。この他に、ステージの上下 (かみしも) からステージに向ける形のヨコアテ(またはサイドフィル)と呼ばれるセッティングも主流で、多くの場合、ヨコアテとコロガシを併用します。

状況によっては、マイクスタンドに BOSE 101 をマウントしてドラマーに返すこともあるな。あ、モニターを出すことを 『返す』 と言います。モニターやモニターに使うスピーカや回線を総称して 『返し』 と呼びます。

スピーカの置かれ方を見て分かるように、返しってのは、普通スピーカは客席を向いてるから、ステージの上では音がよく分からん。ステージにも分かるようにスピーカを置いてくれ というリクエストに応じるためのものです。ライブなんかでは、ボーカルさんにはボーカル音声だけ返して、ドラマーさんにはベース音声とボーカル音声だけ返してちょこっとだけギター音声も出してあげる、とかごちゃごちゃしてるんだけど、夏祭りなんかだと客席に出ている音をそのまんまモニターに返してあげることが多い。なんでかっていうと、出演者が入れ代わり立ち代わりの中では、細かくコントロールしてる余裕なんかないんです。

だからしばらく、夏祭りスタイルのモニターについて書いていこう。

返しにステレオ再生は必要ない

念のため書いておくんだけど、返しにステレオ再生はまったく必要ありません。オモテもモノラルで済むことが多いんだけどこれとは別の概念で、『必要な音がちゃんとステージに聞こえる』 ことの方がはるかに重要です。

カラオケなら、ふだんスナックなんかで歌ってるのと同じような聞こえ方をするモニターが取れればいいんです。スナックとかでステレオ感を意識したこと、ないでしょ?

というのはあくまで夏祭りレベルの話ではありますが。電子鍵盤楽器の人はステレオ感を確認したいことも多いようで。まあそのような方は自前で自分用のモニター機材を持ち歩いておられます。

モノラル構成で楽ちん仕込み

まず、返しのスピーカの置き場所について。

夏祭り等のイベントなら、左図の1と2で示した位置に置く、ヨコアテが楽なように感じます。これならステージ全体を広くカバーできるからです。特に舞踊のようにステージ上を動き回る出し物がある場合、有利です。

スピーカの高さは、スピーカが人の頭の位置に来るくらいが基準だと思う。でもそれだと、ホーンツイータの音がうるさく感じることもあるから、その時は少し低めにしよう。高めにしてもいいんだけど、低くする方が物理的に安全だからね。

ちなみに3,4は客席に向いているオモテのスピーカね。そして、スピーカからヒゲが生えてるように見えるのは、スタンドにマウントするんだよという記号。私がスタンドマウントで使うことが多いのでこんな図になりました。

もっと書いておくと、この正方形の中に三角形を入れ込んだのがスピーカの記号。四角はスピーカのエンクロージャ(箱)、三角はスピーカユニットを模して、上から覗き込んだ形を描いたんじゃないかな。

ヨコアテってのは俗称で、ステージの左右(上下=カミシモ)から返すのをそう呼びます。正しく(?)はサイドフィルと言ったりします。

さて本題に入ろう。

全体をモノラルで構成して、卓 (ミキサー) 出力の『左をオモテ(客席向け)』『右を返し』ってやっちゃう方法があります。少々荒っぽいけどね。この時、卓のインプットセクションのPANPOT(PAN)は全てセンターに揃えておきます。

1チャネル分の信号で、パワーアンプ2チャンネル分の信号をかける

さて、パワーアンプには1チャンネル分しか信号を入れずに2本のスピーカを駆動することになった時、どうするか。

こんな時はパワーアンプの2つのチャンネルに同時に同じ信号が行くようにすればいいよ。多くのパワーアンプではXLR入力とホーン端子入力が併設されてるので、XLRで卓から持ってきて、ホーンケーブルでこんな感じでもう一つのチャンネルに渡してあげます。こんな時のつなぎかたは、『カスケード接続』 『送り・もらい』 とかいう呼び方をします。

パワーアンプによって、XLRのオスとメスとホーンが併設されていたりするので一概にホーンケーブルでカスケードとは言い切れないんだけど、使うケーブルは違っても同じつなぎ方で同じ事ができるので、リアパネルをよく見てみよう。ただし、機種によってはホーン端子からスピーカ出力が出てることがあるから、こいつをカスケードに使わないように気をつけてくれ。

パワーアンプが1台しかないよ~~

もうひとつ、1台のパワーアンプでオモテと返しをまかなう方法があります。

パワーアンプまでは卓のL/RをパワーアンプのCH-1/CH-2までつないで、CH-1のスピーカ出力をオモテの1台のスピーカにつないで、そのスピーカからもう1台のスピーカに並列につなぐんだ。俗に、パラうと言います。返しもCH-2で同様に接続してくださいね。

パラい方は、スピーカの説明書を見れば分かるはず。ただスピーカの入力端子が1個しかない場合、並列に2系統に分けるケーブルを自作したりしないといけないかもしれない。この時、パワーアンプから見たスピーカのインピーダンスが半分になるから、パワーアンプの出力が上がります。これはパワーアンプの説明書の仕様欄を見れば分かります。理論的には4倍の出力が得られるんだけど、現実には1.5~2倍となるアンプが多数派です。

ただしこのつなぎ方は、スピーカ2台までに留めてください。3台も4台もパラうとインピーダンスがその分下がっていって、パワーアンプから見たら負荷がショートしたのとほぼ同じ事になります。パワーアンプから見たインピーダンス(合成インピーダンス)は、個々のスピーカのインピーダンスの逆数の和の逆数だ。これがアンプの定格内に収まるようにね。