PA初心者必携ウェブサイト(?)
ここでは、ある程度オーディオに通じている人なら誰にでもできそうな、現場での音の出し方を考えてみましょう。地元の夏祭りとかカラオケ大会とかで、個人がボランティア的に行う程度のレベルで、どんな機材が必要なのかを見てみます。
という現場を想定してみます。
8チャンネル程度の入力に、ステレオ出力1系統がついていればOKとします。
実際には、モニタやエフェクタに使うAUXセンド等がついていますが、とりあえずここでの説明ははしょりますね。
必要なパワーは場所や収容人員によります。200w x2程度で、とりあえずその辺にあるものを使ってみましょう。それでパワー不足だったら、次回への反省事項ということで。
トランペットスピーカなら、10W~30W程度で結構なんとかなります。あの堅い音でよければ。
スピーカに見合う出力のものを。とりあえずは実際の運用で、スピーカの耐入力以上の出力が出なければOKです。
実際にはスピーカ耐入力の倍の出力を持つパワーアンプが推奨されます。これは、不意に出てしまった高出力が、ぎりぎりのアンプだと歪みを生じてツイータを破損しやすい、という事情によります。
喋るのにも歌うのにも楽器の音を拾う(D.I.とかいうのはひとまず忘れて)のにも必要です。
家電量販店で安く販売されているのは、変なクセがあったりハウリングを起こしやすかったりしますが、それが気にならない限りは何を使ってもOKです。司会者+スピーチ+予備で3本と考えましょう。3本あれば、カラオケのデュエットに司会者も絡むことができます。
マイクケーブルとスピーカケーブルは長いのが必要です(マルチケーブルとかいうのはひとまず忘れて)。
あと意外に、現場での電源コンセント不足に悩まされることがあります。ありったけのテーブルタップを持っていきましょう。
マイクについてはおそらく 『マイク延長コード』 も併用することになりますが、事前に接触不良がないか確認し、プラグ・ジャックは接点復活剤(なければ緊急的にCRCのような潤滑剤も可と言われるけれど)で丁寧にメンテナンスしておいてください。
一般向けのホーンプラグ・ジャックは接触不良を起こしやすく、これは音が出ない・出てもノイズ混じり、というトラブルの原因です。
BGMとか、余興の音源として必要ですね。必要なものを必要なだけ準備しましょう。
ただし、カラオケがしたいからと言って家庭用の通信カラオケ装置を持ってきても使えません。あれは、リクエストごとに機械が電話をかけてデータをダウンロードするので(2000年代にはそんなカラオケ機器が普及しました)。
業務用の通信カラオケ装置は、非営業時間帯に最新曲をまとめてダウンロードするので、回線がつながっていなくても使えます。ただし、イニシャルコスト100万オーダー、ランニングも数万円オーダーじゃないかな?ちょっと大変です。大手のカラオケ屋さんのリセラーさんがレンタルしていることもあるので、調べてみましょう。
2020年代現在だと、インターネットがつながる場所ならインターネットカラオケの個人向けサービスも普及しています。しかし不特定多数の公衆に向けて音を出すとなると著作権の問題が出てくるので、いろいろ調査と対応が必要です。
すべての入出力にインピーダンスという数値がつきまといますが、ここではスピーカとパワーアンプを心配してみましょう。4オームとか16オームとかいうアレです。基本的には、スピーカとパワーアンプのインピーダンスは一致させるべきです。ここで、8オームのスピーカを接続できるという定格のパワーアンプが手元にあると想定してみます。
定格を無視してインピーダンスが低いスピーカ(たとえば4オーム)を接続すれば、オームの法則から分かるように高出力が得られます。定格を無視してスピーカのインピーダンスを高いもの(たとえば16オーム)にすれば、出力は低くなりますが別の要因でどっしりした音になります。
これ書くとあちこちから怒られますが、8オーム定格のパワーアンプに4オームだとか16オームのスピーカを接続してもいきなり壊れることはありません。しかしどちらにしてもパワーアンプが設計上想定していない発熱につながり、健全な運用ではありません。パワーアンプの定格は多くの場合『8オーム~16オーム』などと幅を持たせてあります。この範囲内のスピーカを接続するようにしましょう。
スピーカを並列(パラレルにする、パラう)接続することもあるでしょうが、このときは合成インピーダンスで考えます。このあたりはこのページに少しだけ詳しく書きました。
屋外でも恵まれた現場なら、仮設電源が引かれていることでしょう。もしそうでなければ、ポータブル発電機を買うか借りてくるかしましょう。2020年代の今なら蓄電池使用のポータブル電源もありますが、PAの電源としてはどうなんでしょうね。
容量が足りるかどうかは機材の規模によりますので、いろいろ計算してみてください。いずれにしても、屋外現場だとかき氷機だとかの負荷も想定して、綿密に計画しましょうね。
屋内だとそこらにコンセントがありますから、あんまり困ることはないでしょう。しかし同じ回路に高負荷の機器がつながっていることもあるので注意が必要です。コンセントの位置を選べるのなら、テスターで電圧を測ってできるだけ電圧の高いところを選んでください。高負荷がかかった時の機材の安定性に寄与します。その前に、その回路の許容電流(ブレーカの動作電流)にも注意を払ってください。
ドカジェネと呼ばれる工事現場で見かけるような発電機もあり得ます。この場合、出力電圧や周波数を調節できるものが多いので、厳重に注意しましょう。なにもつながずに運転開始し、電圧が100Vであること、周波数が50~60Hzであることをきちんと確認してから機材の電源につなぎましょう。一度このチェックを飛ばしてしまって、そんな時に限って100V/30Hzという電源供給を食らってしまい、一部の機材が煙を吹いた経験があります。