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このページも2023年1月に若干手を加えました。
初稿はおそらく2000年代前半。当時の巷の音楽の大半は、イントロがたっぷりあってテーマ(主題=つまり歌本体)に入っていったものです。一方の2020年代前半である現在、いきなりテーマのサビから入るような曲が多くなっています。サブスクなどオンデマンドメディアの流行で、ひとつの曲をゆっくり聴く文化が薄れている影響とも言われます。
そんな今、このページに書いてあることがどこまで通用するのかは分かりませんが、主旨は大きく変えないままにしておきます。
前に、番組制作という言葉をちょっと出しました。
地方や状況により差異はあるでしょうが、披露宴はだいたい2時間30分の長編番組です。ロマンチックにしようとバラッドばかりかけていたら客席では眠くなるでしょうし、あまりポップなのばかりだと全体的に軽いおざなりな仕上がりになってしまいます。また、料理の進み具合も考えないといけません。
さいわい『起承転結』という便利な言葉がありますから、これをもとに披露宴を組み上げていきましょう。この感覚は披露宴ばかりでなく、コンベンションやパーティにも通ずるものがあります。
念のため、『起承転結』 を展開しておくと、
盛り上げたいところで派手な曲を使うのは正解です。でも、その直前に使っている曲も同じような派手さを持っていたとしたら、盛り上げたいところがかすんでしまいます。前後関係を考えて、盛り上げるとこまでタメてタメて一気に爆発! というような曲の選び方も必要です。
逆に、静かなバラッドで入場して、最後までロマンチックにいきたいからとそれに続くケーキカットもバラッドを使ったとしたら、ケーキ(つまり新郎新婦)から離れた場所にいるお客さんには、今何をしているのかよく分かりません(しっかりこだわれば、バラッドからバラッドへハッキリと切り替えることもできます)。
もっとも、曲によってはフェーダの使い方でものすごく効果的になることもあるのですが、基本はメリハリ、としておきましょう。そのメリハリはがらっと曲を切り替えてしまうことかもしれないし、フェーダーワークかもしれません。
四の五の書きましたが、理屈は抜きにして、思い切り単純化した披露宴を構成してみましょう。
なんでもいいんですが、ウケとか感動を狙うところではありません。
お客様の緊張を緩めながら、存在していないようで実は存在しているという音楽がちょうどいいです。ピアノトリオとか、バロックっぽいクラシックとか。オーケストラものは、ピアニッシモとフォルテシモの差が大きすぎて、難しいです。食事・歓談中もこれに準じます。会場しだいではカントリーやブルースなども。絶妙な退屈さ・単調さが必要です。会話や食事を邪魔しないために。
『長持唄』なんてのも1990年代後半年あたりまでは結構ありました。でも和風にこだわる必要はありません。洋楽の使用に関しては私の周囲でも賛否両論あるのですが、邦楽のしっとりしたあたりならOKです。日本の古典的な音楽で入場に使える曲を選ぶのは意外と難しいのですが、ハマる曲が見つかればいいですね。
最近は媒酌人不在の披露宴も多く、プロフィールをMCさんが取材(聞き込み)を基に行うケースが一般的です。声(つまりプロフィールの内容)を前面に出しますから、イージーリスニング的な感覚で優しさを感じられるのがいいですね。思い出の曲だからと何でも使ってると、曲に耳が行ってしまいます。割とマイナー(売れ筋でないという意味)で単調なのを選びましょう。昔はニュース番組や天気予報のBGMにもいいのがありましたが。今はほぼすべてがスピード感やキャッチーな感じを優先しているのか、テレビでよさげな曲に出会うことはなくなりました。
派手に行きましょう。天井の高さが4メートルほどあるようなら、いきなりテーマから派手に展開するビッグバンドあたりがはまります。
派手にとは言っても天井の高さや会場の広さによって曲のスケール感がミスマッチとなることもありますので、ヒマな時に現場で実際鳴らしてみてください。短めの曲を選んで、その曲が終わるまではな~んにもせずに、BGMを切り替えたところでたとえば祝電披露にいくのが自然です。
ここでは、入場からそのままケーキカットに進んでいく進行を前提とします。この場合、入場曲とケーキカットそれぞれ違う曲を当てるのであれば、明確に違いがわかる選曲がベターです。
あまり難しく考えることもありません。好きな曲を好きなように使えるシーンです。『それが個性だよ』と言える部分です。それよりも、BGMや乾杯まわりなどの演出的に目立たないシーンの方が、選曲は難しいものなんです。
派手に目立つ曲が分かりやすくていいです。直前の入場シーン(そうでない場合はその直前のシーン)での曲に覆い被さるような。実際にナイフが入ろうが少し手間取ろうが、MCのコメント(『ご入刀です!』とか)に合わせて、出足はうるさいぐらいにいきましょう。出足数秒をうるさくいったら、すっとフェーダーを少し下げて、MCさんの入る余地を作ります。
『ご入刀です!』から実際の新郎新婦のアクションが10秒程度遅れてしまうこともありますが、出した音は出したまま。勢いで乗り切れます。
ここでは、メッセージを読み終えた後にふたりが両親のもとへ歩き始めるという進行を前提にします。
どんなに演出がうまくいっても、ここを美しく作れないと台無しです。MCさんが代読したり新婦本人が読んだりしますが、基本的にインストを使うってのはプロフィール紹介と一緒です。読む声を引き立たせるように、どこまでも優しい曲を。
ここはインストにこだわる必要はありません。予定調和的な感動を求められる場面ですから、穏やかさ、美しさ、時として力強さを持った曲がいいでしょう。
メッセージの読み終わり、たとえば『・・・・・・嫁ぐ日に、ますみ。』というのをじっと待ち、最後の『。』から一呼吸遅れて少し強めに音を出しましょう。あとはMCさんの邪魔をしないオペレーションを。
もうロマンチックはいりません。乾杯のように派手に、エンディングを飾りましょう。万歳三唱のような明確なアクションがないのであれば、穏やかな曲がマッチすることも多いです。
上に書き出してみた構成は私が一般的に組みがちなもので、決して 『これがベストなんだろうな』 と決めつけないでください。しかし、小さなお子様からご年配の方までが参加する披露宴を数百本こなす中で、自然にできてきた私の中での一応のマニュアルではあります。
新郎新婦も多種多様、列席のお客様も多種多様。このバランスを取るのは結構難しいです。Hip-HopとかEDMな二人のリクエストだからと最初から最後までそればかりじゃあ、ジイさんバアさんは疲れます。初孫の花嫁姿に感動、どころじゃありません。
あと重要な検討材料に、MCさんとのカラみがあります。祝電を読んだりいろんな案内をかけたりする時間でもある『食事・歓談中』に派手なBGMをかけていれば、本当に落ち着きのない、後味のすっきりしない仕上がりになってしまいます。
にぎやかな曲を否定してばかりいるようですが、そうでもなくて。たとえば、余興のオープニングやつなぎとして使うという方法もあります しばらくゆっくりとしたBGMでくつろいでいただいている中で、ちょっと強めに派手な曲をかけてあげれば、それがテレビの世界でいう『アイキャッチ』的な効果を持ってきます。MCさんがいちいち1から10まで案内しなくても、音でお客様の意識を誘導できるのです。
余興と余興の間も神経を使うもので、私は余興1本につき1曲、選曲作業をしていました。たとえばカラオケが終わったところでMCさんのお礼のコメントが入りますが、『・・・ありがとうございました』を言いきったところで、ぽん、とその曲を出してあげるというやり方です。余興1本1本もひとつの『シーン』と捕らえ、シーンチェンジを明確にしてあげるのです。こうしてあげればMCさんにもいいテンションがかかるみたいで、テンポの良い進行になります。
職場であったホテルのホールが著作権管理団体と包括契約を結んでいたので、演出に使う曲もBGMに使う曲も著作権の心配をする必要がありませんでした。
BGMは、入退場やセレモニーに関わる演出部分に比べてかなり軽視されていると思いますが、それではあんまり面白くありません。少なくとも有線や一枚のCDをベタっと回しているようでは、ね。まあ歓談中ならそれでもいいのですが、私は自分で選曲してMDにまとまてみたり、一枚のアルバムのベタ流しでも『ちょっとこれはどうかな?』というトラックを外したり、それなりに工夫していました。
今(2000年~2010年頃)なら、適当にmp3なんかでPCに放り込んでおいて、foobar2000とかwinampにm3u食わせてもいいしね。たしかWindows Media playerでもm3uを扱えたと思うけど、fb2kとかwinampならクロスフェードができるし、キーバインドも自由なんで楽です。その中でもfb2kを使うことが多いです。winampは余計な機能が邪魔すぎて。
業務用の有線(USEN 音楽:おとらく)を契約しているので、シーンに応じてプレイリストを切り替えながらということになるでしょう。時代の変化を感じます。
音楽(おんがく)としていかがなものかという議論は別にして、どのプレイリストのどの曲を取っても音圧感が統一されている(★)ので使いやすいという事情もあります。
(★)そのせいか、ダイナミックレンジの広い録音ではピークで歪んでいる曲もありました。USENに報告したら改善されたようですが。