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日常生活と音楽と

音楽を聴く耳を持とう

あなたの手元に今、どれだけのCDやMDがありますか?(2005年頃向け)

あなたのプレイリストにはどのくらい音楽が入っているでしょう?(2010年代向けかな?)

サブスクで気に入っているアーティストや曲は?(2020年代向け)

いえ、数の問題ではありません。

たとえば夕暮れの景色の中を車で走るとき、つい聴きたくなる音楽がありますか? それもいくつもあって、一人の時と、好きなヒトが助手席(あるいは運転席)にいる時と使い分けられますか?

一人で飲むときに必ずかけてしまう音楽はありますか? 恋人と出かけた店でたまたまロマンチックな音楽がかかっていて、その音楽と店の雰囲気と相手の存在の素敵なマッチングに感動したことがありますか?ミスマッチに落胆した経験でもいい。

テレビドラマや映画でつい泣いてしまったとき、そこに効果的に使われている音楽に気付いたことがありますか?

バラエティ番組の過剰な効果音を五月蝿いと思ったことがありますか?

日常生活のちょっとした空間を自然に演出する音楽があります。好きなヒトを助手席に迎えたとき、嫌なことがあって一人で飲むとき、それぞれのシーンをあなた自身を主人公にして音楽で演出できる感性は、披露宴の演出に携わる者として必須条件だと思います。

さてここで出題。

あなたが今いるのは、晴れた夕方の砂浜です。水平線の上には、鮮やかな夕日。そのあなた自身を誰かがビデオカメラに撮影してくれました。あなたがその映像に当てるのにぴったりだと思う楽曲を、1曲決めてください。あなたがその場面に一人でいるのか好きなヒトがいるのか、あるいは仲のいい友達何人かと一緒なのか、季節はいつなのか、そのあたりのシチュエーションはあなた自身が決めてください。

音楽を感じる心を持っているか

上で何を言いたかったのかって、ヒトサマを感動させる仕事をするのに、まずあなた自身が感動できないでいてどうするの、というおハナシです。

アプローチはどんなんでもいいです。とにかく音楽で感じて欲しいのです。

一人で灯りを落として静かなバラッドを聴きながら、日本語しか理解できない頭で辞書片手に歌詞を訳してみる、という聴き方もいいです。少し会社に嫌気がさした夜、ピアノとギターのデュオを聴きながらバーボンをストレートであおってしまうのもOK。好きなヒトからの手紙を、キレイなピアノを聴きながら読むのもいい。逆に、書いたのを封筒に収める前に何度も何度も自分で読み返しているときでもね。

私の大好きなジャズマンに、トゥーツ・シールマンスというハーモニカ吹きがいます。もうたいがいジイさんなんですが、ジャケ写真で見る彼は本当に『やさしいおじいさん』の面持ちで、アルプスの少女ハイジあたりに出てきそうです。そしてその演奏もまた、暖かい。悲しく聴こえる曲でさえ、彼が吹けば一種の優しさを帯びてくる。ジンでうつろになった耳で聴くと、全てを抱擁してくれさえするのです。

少し派手に転んで怪我をして泣き出してしまった子供にも、『男の子だろ、泣くんじゃない!』とは決して言いません。ごついんだけど暖かい手を両肩に乗せて、気が済むまで泣かせてくれます。

聴いていて気持ちいいから聴いている。これも正しい音楽の聴き方です。と言うか、音楽の聴き方に間違ったあり方なんてありません。炊事洗濯をしながらでも、昼寝しながらでも、好きなように聴けばいいんです。でもその音楽と共に人を感じさせるのが仕事であるあなたは、なぜその音楽が気持ちいいのか、あるいは耳に馴染まないのか、ちょっと掘り下げて考えなくてはいけません。

余談ですが私の好きな音楽

このコマ、初稿では長々とした書き方をしましたが、人生44万時間ほど生きた今読み返すと、かなり恥ずかしいものです。なので手短にリライトします。私の音楽的趣味など、読んでいるあなたにとってはどうでもいいことだと思いますが。

私はピアノトリオからコンボくらいまでの規模のジャズが好きです。若い頃はビル・エバンスや前述のトゥーツ・シールマンスやなどなど、自宅でジンをあおりながらずっと聴いていたものです。ジャズが好きなのもあるし、そういう聴き方をしている自分も好きだったんでしょうね。どちらかというとアンニュイなプレイを好んでいました。

今はPAついでにライブレコーディングをすることもあり、ミックスダウン疲れからか市販の録音物を積極的に聴くことは少なくなってきました。しかし車の中にはやはりある程度ジャズのアルバムを積んでいないと落ち着きません。

なんでもいいです、あなたにもあなた自身の背景となる音楽があるといいですね。